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55歳で大学生−赴任の夫とブラジルへ愛がある日系人高齢化問題論文
駐在員夫人名取さん「何かできないか」と
日本企業のブラジル駐在員夫人で、昭和女子大学に通う名取賜子(ますこ)さん(55)が、『ブラジル日系人の高齢期の生活と社会福祉』と題する論文を作成した。夫の赴任で訪れたブラジル。そこで直面した日系社会での深刻な高齢化問題を、2年半の歳月をかけ、調査分析に当たった。「高齢期を迎えた移民の方々の抱える問題に触れ、何かできないかと感じた」と名取さん。論文では日系高齢者の今を深く掘り下げる。
もともと地域社会活動に興味を持っていた名取さんは1997年、社会福祉を学ぼうと昭和女子短期大学に入学した。在学中、折しも夫のブラジル駐在をきっかけに、ブラジル日系社会に興味を持った。
同大学の生活科学部生活環境学科に編入した後も、事あるごとにブラジルを訪れ、ブラジル社会や日系社会の福祉構造の分析から、お年寄りの声までを集めた。研究を始めて2年半で5回来伯。その都度、老人ホームや老人クラブ、日系福祉団体を訪れ、調査や資料集めに没頭した。
そうして作り上げた論文では、ブラジル移住の歴史を振り返るとともに、医療や福祉、世代間の隔たりなど日系高齢者が直面する問題を中心に記した。日系福祉団体の実態やブラジルの社会福祉政策、また在外邦人や日系人に対する日本の支援の現状やその責任など、官民の関係を含め多角的に追った。
論文内でもっとも興味深いのが、日系のお年寄りから話を聞いた「ヒヤリング調査」。老人ホームの入所者や在宅の高齢者、家族のいる人やいない人など、複数のパターンで聞き取りを行った。生い立ちや移住までの流れ、ブラジルでの生活から今日に至るまで、そして現在の問題など。
食事も小遣いもホームからもらえるので幸せというAさん。ホームの食事をよくして欲しいというBさん。日系高齢者への年金支給が実現されるようにというDさんなど。在外選挙の問題から出稼ぎによる農村の空洞化、言葉の違いによる世代間でのコミュニケーションの難しさ、費用・保険などブラジルの医療問題など、高齢となった日本人移住者の持つ問題を浮き彫りにする。
名取さんは高齢化した日本人移住者の問題として、年金、医療、言葉を挙げる。特に年金では、日本の内外居住を問わず、日本国籍者に老齢福祉年金の支給を強く訴える。
「最終的な判断は個人であれ、移住者は日本の政策で海外に送り出された。日本にいたら、日本の福祉の対象となっていた日本人です。『目の前から消えてしまったら、もう知らない』というような考えはおかしい」
論文の最後で日本国憲法第25条「生存権」を社会福祉の原点と位置付ける。「本国で暮らす者も異国で暮らす日本人も等しく受ける権利を有する」と名取さん。この論文をもとに、ブラジル移住者の現状を説明し、関係省庁に訴えかけたいと力を入れる。
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