五輪選手を育て続ける
篠原さん76歳毎日道場へ
めざす徳のある柔道
シドニーオリンピックが10月1日、閉幕した。奮わなかったブラジル勢の中で、大きな成果を残したのが柔道。73キロ級のチアゴ・カルロス選手(18)と90キロ級のカルロス・オノラット選手(25)が銀メダルを手にした。そのオノラット選手を育てたのが、〃篠原柔道〃で有名な篠原正夫さん(76)と息子のルイスさん(46)だ。正夫さんは教え子の試合を振り返り、「予想以上の健闘だった」とその活躍を讃える。
篠原道場の入り口には、「HONORATO PARABENS〈オノラットおめでとう)」と大きな幕が掲げられていた。
「根がまじめだから」オノラット選手を語る
オノラット選手が篠原道場(ビラソニア道場)に通い始めたのは7歳の頃。父親の勧めで柔道を始めた。「元々、頑張り屋な子だった。弟のフラビオと一緒に道場に入り、二人で競い会うように練習していた」と正夫さんは昔を振り返る。体ができあがる14歳くらいまでは、正夫さんが指導し続けた。
その間にも篠原道場からは数々のオリンピック選手が誕生、輝かしい成績を収めた。息子のルイスさんをはじめ、84年のロサンゼルス五輪で3位入賞した恩村ルイス選手。88年のソウル五輪で金メダル、96年のアトランタ五輪で銅メダルに輝いたアウレリオ・ミゲル選手は記憶に新しい。
そうした先輩選手の健闘を横目にオノラット選手も着々とカを付ける。93年のパンアメリカン大会優勝や同年の南米選手権優勝、98年の世界学生選手権3位など。「根がまじめだからね。着実に強くなっていった」。
そして迎えた今回のシドニーオリンピック。正夫さんとルイスさんはテレビの前で、まな弟子の戦いぶりをこぶしを握り、観戦した。「技が単調だから心配した。〃かたぐるま〃が出たからね」と正夫さん。そんな父を横目にルイスさんは「大丈夫。まだ技が出る」と読み切った。そうするうちに、「〃内股〃や〃小股〃、投げも出たしね。よかったよ。でも決勝はね、残念だった。あれだけの成績は予想外だったから。本番でいい柔道が取れたと思う」と師匠も納得の柔道だったようだ。ルイスさんもオノラツト選手の柔道を「最後の試合を除いては10点満点」と評価する。
正夫さんは言う。「金メダルではない。だから今度こそ(2004年、ギリシャ五輪)だ。同じく2位のチアゴは18歳と若い。あと年齢的にあと3回はオリンピックに出場できる。二人とも帯びを締め直し、次に向け頑張っててほしい」。静かにエールを贈る。
篠原道場には現在、200人余りが稽古に訪れる。そのうち日系人は約3分の1。正夫さんは毎日、稽古をみる。オノラツト選手もブラジル代表の練習がないときには、ヴィラ・ソニアの道場で稽古を続けているという。
正夫さんは自身の道場の他にも週に3回、ブラジル柔道連盟の稽古に立ち会い、指導している。「主に子供たちだけど、でも楽しいよ。柔道を好きになってもらいたいし、続けてもらいたい」と今や〃国技〃とも言える柔道。正夫さんは将来のオリンピック選手を育て続ける。
正夫さんは柔道について、「道(どう)は人間をつくる道。力あるだけ、強いだけではだめ。徳のある柔道を目指してほしい」と語る。柔道をするすべての選手に『心ある勝者』になってもらいたいとも。
(ニッケイ新聞)