いざ、日本へ‐総領事館ビザ発給班パンク寸前
サンパウロ総領事館査証班(中塚卓雄領事)は、ビザ発給のための書類審査の仕事に夜遅くまで追われている。同班には2人の領事と7人の職員がおり、この9人で1日に1000件近い書類を審査する。「書類受け取りだけで1件40分かかることもある」(サンパウロ市内のあっせん業者)というから、査証班は物理的にも体力的にも絶対無理な業務をこなしていることになる。ここに金銭収賄(しゅうわい)などの汚職が入り込む余地もある。日本政府による抜本的な対策が望まれる。
非日系ブラジル人あるいは日系ブラジル人3世が、いわゆる出稼ぎビザ(就労可能な長期滞在査証)を申請してきた場合に慎重な審査が必要になる。非日系人の場合は、「本当に日系人と結婚しているのか」、「本当に観光目的で訪日するのか」などが審査される。
例えば日系2世と非日系女性が結婚し、出稼ぎに行くことになった。日系2世が先に日本へ行き就職、非日系の妻が後を追う形で訪日することになっていた。夫は妻の航空券、書類などすべて完璧に整えて訪日した。サンパウロ総領事館はこの非日系女性にビザをなかなか出さなかった。そのため2世の夫は心配で、ようやく見つけた仕事を放り出してブラジルに戻ってきてしまった。このケースは最終的には妻のビザが下り、夫婦そろって日本へ行くことができた。
総領事館は偽造結婚の可能性を調べたと考えられる。前述の出稼ぎ夫婦のあっせん業者は、「日本の法務書が作成したマニュアル通りに書類を作った。書類は完璧だ。査証班の窓口で奥さんの書類を受け取るのに40分もかかりました」と、首をかしげる。結婚して半年以上たったことを証明する結婚証明書、在留資格認定書など法務省が1990年に作ったパンフレット通りに手続きを進めた。にもかかわらず総領事館の答えは、「審査中ですのでお待ちください」の一点張り。
業者は、「新しく日本から来たばかりの領事はいいところを見せたいのだろう。成績を上げたい。失敗はしたくないから慎重になる」と、着任したばかりの領事の心理を分析する。
問題は、「あっせん業者によって、ビザが出たり出なかったりする。同じようなケースで同じ書類をそろえても、早くビザが下りる業社とそうでない業社がある」(複数のサンパウロ市内の出稼ぎあっせん業者)ことだ。業者たちの話を総合すると、サンパウロ総領事館のある館員と友人関係、親せき関係など特別な関係にあるあっせん業社が5社ある。ある業者は、「自分の所で出なかったビザが、その5社の一つに書類を持ち込んだところたちまちのうちにビザが下りた」と証言する。
あっせん業者の中には、「わいろを握らせれば、現地雇いの館員はすぐ転ぶ。わたし自身がブラジリア大使館をはじめ4つの公館で金を使ったのだから間違いはない。いざとなれば、裁判所で証言したっていい」と、妙な自信をもってうそぶく人もいる。それだけに、「真面目に仕事をしているあっせん業者がばかを見るようなことはあってほしくない」との声も強い。
ビザ担当領事の談話
サンパウロ総領事館の中塚ビザ担当領事は、「一部のあっせん業者にだけビザを発給している事実はない。また発給を締めていることもない。統計的にも不許可件数が特に増えているわけでもない」と全面否定。「誠意を尽くしている。夜も働いている。家族と会話する時間もない」と査証班の現状を説明した。
人員不足の現状については、今までにも何度か外務省に報告されている。そのつど外務省から送られてくる回答は、「検討中」だ。